相続するまえに、贈与してしまえ!
私のところには、単純に不動産の話だけでなく、相続や贈与絡みの相談も多いです。
特に近年、増えています。
高齢化社会における大きな問題ともなる、相続や贈与の問題。
昔はお金持ちの問題のような感じでしたが、いまでは普通のご家庭にも大きく係わる問題になってきました。
タイトルが「相続するまえに、贈与してしまえ!」と激しいタイトルですが、このコラムのリアルな話を読んでいただければ、意味が分かると思います。
とくに不動産についてお話します。
不動産の相続
父名義の不動産があって、そこに父と母が住んでいる。
二人の子どもがおり、すでに各々独立し遠方に住んでいる。
こうした場合、近い将来どういうことが想定されるでしょう。
父または母の認知症の発症
あくまで可能性の問題ではありますが、高齢化社会において認知症の問題は切っても切り離せない問題。
誰にでも発症しうる問題です。
こうした状況になった場合、何が一番困るのか?
それは、
意思確認ができない
ということです。
不動産を取引する場合、もちろん契約書なども用意しますが、根本的な問題があります。
それが「意思」です。
売主、買主、賃貸人、賃借人、贈与、受贈、など不動産に関する様々法律行為は「本人の意思」によるものです。
しかし、もし認知症となった場合症状の程度にもよりますが「正常な意思確認ができない」となります。
例えば、こんな場合はどうでしょう。
父が所有する物件に、父と母が住んでいる。
父が認知症を発症し、母はとてもお世話ができる状態ではない。
子どもたちも遠方におり、自分たちのことで精いっぱい。父を除く家族で相談した結果、父をグループホームに入所させることにした。
しかし、グループホームも毎月大きな費用が掛かる。
よって、父名義の家を売って費用にし、母は長男の家で同居することにした。
ぜんぜんあり得る話だと思います。
家族としては「売ろう」と一致したものの、ここで大きな問題が発生します。
それは「所有者である父の意思確認」です。
家族間での売買であれば、適当にやっても問題ないだろうという風に考える方もいますが、第三者にこの物件を売るとすればそうはいきません。
なぜなら、そこに「司法書士による所有権移転登記」がおこなわれるからです。
登記は義務ではありませんが、ほとんどの取引では売買がおこなわれると、所有権の移転登記がおこなわれます。
その際、司法書士による「本人の意思確認」が絶対に必要です。
そして、その意思確認ができないとなると取引ができません。
司法書士の立場としても、意思確認ができない人の手続きは絶対しません。
ましては「認知症の診断」がある場合であれば、「意思確認が無効」となる可能性もあるので、まともな司法書士は手続きをしません。
言い換えると
家族がいくら「お父さんに使うお金だから」といって、不動産を売ろうとしても、その名義人である父の意思確認ができない限り売ることも貸すことも処分することもできない。
これが事実なのです。
そして、これは認知症だけの問題ではありません。
急病で意識がない状態が続く。
そんなことも同じリスクが伴います。
もちろん、そんなことは誰しも起こりえることではありますが、確率論でいうと当然高齢者であるほうが確立も高くなります。
よって、しっかりと意思確認ができるうちに、特に不動産はに贈与などをうまく活用し、不動産の名義は先に次代へつないでおくことが重要です。